みんなに愛されているうちの子

買い物の帰り道、
歩いていると見慣れた顔に会った。
いつも犬の散歩中に会う人だ。
同じ自治会の人ではないようなので
この辺りに住む人なのかどうかは分からない。
ただ散歩中に挨拶をしたり、
愛犬同士がクンクンと匂いを嗅ぎ合うだけ。
私と目が合うとその人が心配そうな顔をして近寄ってきた。
「お久しぶりですね…お元気でした?」
「え?あ、はい」
私が戸惑っていると、
「あの…ワンちゃんはお元気?」と
聞き辛そうに遠慮がちに聞かれた。
その様子から察した。
どうやら私の愛犬が遂に天国に逝ってしまったのでは…と
心配しているようだった。
「元気です!元気!生きています!」
私がそう叫ぶように言うと、相手は笑い
私も一緒に笑った。
老犬になると暑い日差しを避けて
暗くなった夜に散歩に行く。
なので他の犬と会う事もなく、
今まで会っていた人達は心配してくれているらしい。
私の愛犬、なかなか皆に愛されているではないの。
そう思うととても嬉しかった。