二人きりの公園で。楽しい時間が不安な思い出に変わる

二人だけのドッグラン
愛犬を連れて公園に行くと、公園の隅にあるドッグランに誰もいなかった。
いつもなら誰かしら人や犬がいるそのドッグラン。
人も犬も苦手な愛犬を連れて入る訳にもいかず、私は毎回そそくさとそのドッグランを通り過ぎていた。
だが今日は誰もいない。
愛犬を見ると嬉しそうに尻尾を振っている。
私は愛犬を連れてそのドッグランの中に入った。
この中ならリードを放して思い切り走らせる事が出来る。
そしてボールを放り投げると愛犬はまるで羽が生えているかのように、飛びながらボールを追いかけた。
楽しさ全開という感じで、何度も何度もボールを持ってきては投げてくれるのを待っている。
突然動きが止まる
だがしばらくすると愛犬の動きが止まった。
急に無表情になり、私の足の間に入って小さく座る。
どうしたのだろう?
そう思い周囲を見渡したが誰もいないし何も変化はない。
どこか具合が悪いのだろうか…と心配していたところ、少しすると小型犬を連れた夫婦が遠くの方に見えた。
え?もしかして気配を感じたの?
あんな遠くなのに人と犬が来た事が分かったのだろうか?
そして私も慌ててドッグランを出る為にリードを取り付けた。
そして出口に手をかけた時、そのご夫婦が近寄ってきて「こんにちは」と声を掛けられた。
「あ、こんにちは」
私も慌てて挨拶をしたが、愛犬が必死に逃げようとしているので気になって仕方がない。
出会った相手にも気を使わせてしまう
それで入れ替わるようにして私は愛犬を抱いてドッグランから出た。
ドッグランの中に入ったその夫婦は、「何だかすみません。追い出したみたいで」と謝ってくれたので、「いえ!違うんです!この子が犬が苦手なのですみません!」と私も慌てて説明した。
それから愛犬は周囲には目もくれず、一直線に公園の出口まで走った。
そんなに怖がらなくてもいいのに。
あんなに楽しそうだったのに、一瞬で不安な思い出に変わってしまう愛犬が可哀想に思えた。